失速と聞いてどんなイメージがあるでしょうか。
ただ単に飛行機が速度を失うというよりも、飛んでいる飛行機の速度が遅くなることで主翼が揚力を失い飛行機が落ちる。
大事な飛行機がゴミになってしまう一歩手前が失速というイメージですよね。
地面を走る乗り物がいう失速とは比べ物にならないほど飛行機にとっての失速は深刻なものです。
では今回は失速についてのお話です。
まずは飛行機が浮かぶために必要な揚力の話から。
飛んでいる飛行機の主翼の表面には常に空気が流れています。
主翼のおもて面、裏面ともに空気が流れるのですが、おもて面の空気の流れの方が裏面より速くなることでおもて面の圧力が小さくなり、逆に主翼の裏面は圧力が大きくなることで上方へと吸い寄せられます。
これが揚力と呼ばれているものなのですが、理屈から考えれば常に主翼表面には空気が流れていなければならないということが分かりますね。
そして、飛んでいる飛行機の速度が遅くなれば揚力が減り飛行機は空中に浮いていられなくなります。
ところが、速度が出ているにも拘らす失速を起こして落ちてしまうことがあるのです。
飛行機の速度とは。
皆さんがラジコンを飛ばしながら、「この飛行機は速いな」とか「ゆっくり飛んで平和だな」と思うことがあると思いますが、これは “対地速度” のことを言っていることになります。
地面に立って操縦している自分自身から見た飛行機の速さです。
飛行機を飛ばすことにおいて大事なことは “対気速度” となります。
対気速度とは空気に対する速度ということです。
例えば、風が強い時にランニングや自転車に乗ってたりしていると、追い風状態ではまるで無風のように感じたことはないでしょうか。
追い風で走ると空気の流れを感じないということは、対気速度が遅いということになります。
周りの空気と一緒に同じ方向へ移動しているのです。
飛んでいる飛行機にも全く同じことが言え、追い風で飛んでいるときには主翼に流れる空気の量が減っているのです。
追い風で飛んでいる飛行機の速度を落とすことが危険であることが分かりますね。
このことが理解できていないうちには、風の強い日に追い風状態で失速を起こして落としてしまうのです。
機速(対地速度)が速いから大丈夫と勘違いしてしまうのです。
飛行機を飛ばしているときには常に風を読んで飛ばす必要があります。
追い風状態となったときには飛行機の速度を意識しなければなりません。
他にも少し様子が違う失速として “高速失速” といった状態も存在します。
高速失速とは、読んで字の如く飛行機の速度が十分にあるにも拘らす失速するといった状態のこととなります。
追い風が原因で失速する、とも訳が違います。
では、どんな時に高速失速は発生するのか。
飛んでいる飛行機の速度が速い時にエレベーターを一気に引くと発生します。
つまり、一気にエレベーターを引くことにより主翼の迎え角が急激に増え、空気抵抗である抗力が増えるとともに主翼表面に流れていた空気が渦になってしまい揚力が失われてしまい失速するといった状態のことを言います。
アクロ機なんかの動翼が大きくて更に舵角も大きい機体だとすぐに高速失速になりますね。
失速を起こした機体は、飛ばしている側からすると「機体から空気が剥がれた」という感覚になります。
全ての舵の効きが緩慢になります。(元から穏やかに飛ぶ機体は、さほど深刻な状態になることもありませんが)
練習として高度を取った上で意図的に失速させてみるのもいいと思います。
失速をさせた飛行機は即座に高度を上げることはできません。
失速状態に陥った時には、動力のパワーを上げるとともに機首を下げて機速を稼ぎ、安定したところで機体を引き上げ復帰させます。
ですので、高度も速度も低い着陸時は、失速しやすいうえに失速したらリカバリーできるだけの高度がないといった地獄のような時間なのです。
追い風での着陸が無謀な行為だということも理解できますよね。
さらに厄介な “翼端失速” というものもありますが、その話はまたの機会に。
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